先に伝えておきたい3つのポイント
- 国立がん研究センターの追跡調査結果から「運動による体重コントロールで発症リスクを減らせる可能性がある」と分かった
- 30分以上の有酸素運動を週に3~4日、継続的に行うといった適度な運動が大切
- 家の掃除を念入りにすることも適度な運動と同じで、乳がん予防と全身の健康維持に役立つ
乳がんは日本人女性罹患(りかん)率トップのがんです。
その数は年々増え続け、現在では日本人女性の12人に1人は発症すると言われています。(※2018年調査)
決して他人ごとではないこの乳がんですが、「適度な運動をすることである程度予防することができる」ことを知っていますか?
今回は、乳がんと運動の関係についてご紹介します。
乳がんの予防のために、まずは「ホルモン」について考えてみましょう
「エストロゲン」というホルモンをご存じでしょうか?
卵巣で作られるこのエストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が周期的に変化することで女性は月経が起こります。
エストロゲンは、月経が終わる頃から排卵前にかけて多く分泌されます。エストロゲンは「女性ホルモン」とも呼ばれ、肌を美しくするといった女性らしさを保つのに必要不可欠なホルモン。
例えば、出産後に髪が大量に抜けるのは、出産によってこのエストロゲンの分泌量が急激に減少するためなんですよ。また閉経を迎える頃に更年期障害を起こすのは、このエストロゲンが一気に減ることで体内バランスを崩しているためです。
ホルモンというものはバランスがとても大切なことが分かりますね。
乳がん発症リスクに深く関わりのある「エストロゲン」
女性にとって大切なこのエストロゲンですが、実は乳がんの発生要因にエストロゲンは深くかかわっているんです。
体内のエストロゲン濃度が高い状態が続くと「ホルモン受容体陽性乳がん」になる発症リスクが上がります。
・閉経が遅い
・出産経験がない
・授乳歴がない
・経口避妊薬の使用
この条件があるほどエストロゲン濃度が濃い期間が長くなり、乳がん発症リスクを高めます。
(※先天性のホルモンバランスなど個人差があります。)
生活習慣でもエストロゲンの量は変化します。
閉経後、エストロゲンの分泌は減ります。
エストロゲンが減るなら乳がんのリスクも下がりそうですが、実はエストロゲンが減った代わりに違うホルモンが分泌されるようになります。
そしてそのホルモンは、なんと脂肪細胞でエストロゲンに変換されます。
つまり、脂肪細胞が多い人ほどエストロゲンが多く分泌され続け、乳がんのリスクにさらされる危険が高まるということなんです。
乳がんの発症にはエストロゲンが深く関係するタイプとそうでないタイプがあるので、痩せていれば乳がんにならないというわけではありません。ただ、エストロゲンが深く関係するタイプの乳がんにおいては、太っていることで発症リスクを高めてしまう可能性があります。
エストロゲン分泌の抑制は、乳がん予防だけでなく、万が一乳がんを発症してしまった場合の治療においても大きな影響があると言われています。
乳がん術後や転移性乳がんの治療法のひとつに、内分泌(ホルモン)療法があります。
エストロゲンを抑える薬剤として「抗エストロゲン剤」が用いられ、女性ホルモンのエストロゲン受容体への結合を阻害します。女性ホルモンの分泌や働きを妨げることによって、乳がんの増殖を抑える治療法です。
このように、女性にとってなくてはならないはずの女性ホルモンも、場合によっては怖い存在になるかもしれないのです。
乳がん発症後には、長い間薬でコントロールしなければならない場合もあります。その際、ホットフラッシュや動機といった副作用が出るケースも。
そうなる前に、内側から自分でコントロールすることが、乳がん発症リスクを抑えられる近道と言えるでしょう。
そのためには、毎日の適度な運動と規則正しい食事や睡眠といった生活習慣が必要不可欠なのです。
脂肪量をコントロールしてリスクを減らそう
ここで、国立がん研究センターによる乳がんの調査を見てみましょう。
国立がん研究センターが平均14.5年間、女性を追跡調査した結果、
53,578人中652人に乳がんの発生がありました。そのなかで余暇運動との関連を調べると、
「週3回以上の運動」の人は「月3回以内の運動」の人に比べて発症リスクが0.73倍と低くなるということが分かりました。
運動することでもちろん脂肪も増えにくくなりますので、この結果からも運動による体重コントロールが発症リスクを減らすということが分かります。
乳がんは遺伝性のものもあり、体重を減らしたからといってすべてのリスクを排除できるわけではありません。
ただし、体重をコントロールすることで一定のリスクを回避することはできます。
予防できる手段があるならばぜひ積極的に取り入れていきたいですね。
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
予防研究グループ
多目的コホート研究(JPHC Study)より
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2600.html
適度な運動とはどれくらい?
では次に「適度な運動」について考えてみましょう。
・瞬発的ではなく、継続的に
1日だけみっちり運動するよりも、運動量は少なくても継続することが大切です。
・週に3~4回、30分以上
ゆったり体を動かせる「有酸素運動」が基本です。
例えば、ジョギングや軽めの水泳がこれにあたります。
そして最もおすすめなのが「歩くこと」です。できるだけ歩く機会を作るだけで、適度な運動量をこなせます。
早朝や深夜は心臓に負担がかかるので、日中の気候が良いときに行うと良いですね。
いつもの「あの家事」を念入りにするだけで、理想的な運動になります!
運動は意識して行っているものだけではありません。
実は知らず知らずのうちに適度な運動を行っている場合もあります。
それは「お掃除」です。家のお掃除を念入りに行えば、体は自然と有酸素運動の状態になります。
お掃除で家をピカピカに磨き上げれば、同時に適度な運動もこなせます。
適度な運動で乳がん発症リスクを減らし、生活の質を上げましょう
日本人女性に身近な乳がん。
まだ発症していない方も、一度発症して治療済みの方も、適度な運動を習慣にして発症リスクを減らしましょう。
適度な運動は乳がん予防だけでなく、全身の健康維持に役立ち生活の質を高めます。
KEA工房では、乳がん術後のためのエクササイズやヨガ講習など定期的に開催しています。
『運動方法がわからない』『効率的なエクササイズについて知りたい』などご希望があればぜひご参加くださいませ。
私たちKEA工房は術後下着専門店のスタッフとして、患者様のお力になれるようサポートさせていただきます。
もし乳がんについてご不安な点があれば、私たちKEA工房へお気軽にお問い合わせください。
ご本人様はもちろん、ご家族様についてのご相談も承っております。
術後下着専門店のスタッフとして、患者様のお力になれるようサポートさせていただきます。