治療用の弾性ストッキングや弾性スリーブについて、「術後どのタイミングで着用を始めるのか」と疑問に思っている方に向けて、リンパ浮腫の発症や弾性着衣の着用時期について解説します。
また、早期発見につながるセルフチェックや普段の生活で気を付けてほしいことなどをまとめました。
リンパ浮腫の発症には個人差がある
リンパ浮腫は手術後すぐに発症する方もいれば、5年あるいは10年以上経って発症する場合もあります。
平均的には術後3~4年を経過した後に発症することが多いといわれていますが、科学的な根拠がないのが現状です。そのため、「術後いつから着用しなければならない」という決まりはありません。
また、上肢(腕)のリンパ浮腫については、「弾性スリーブを着用した状態で運動を行うことが、リンパ浮腫の発症を予防する」ともいわれています。ただし、予防のためといって自己判断の着用はやめましょう。
乳がんの手術を受けた方は、主治医やリンパ浮腫専門医と相談して予防のために使用するかどうかを決めるのか望ましいです。
いつから着用するかは医師の指示に従う
弾性着衣の着用は、治療上の必要に応じて医師またはリンパ浮腫専門のセラピストによる判断で決まります。むくみを感じたらできるだけ早い段階に主治医や専門医より適切な診断を受け、治療を始めることが大切です。
注意点として、弾性ストッキングや弾性スリーブは一般医療機器となるため、購入には医師から出される「弾性着衣等装着指示書」が必要です。
予防のための購入には「弾性着衣等装着指示書」は発行されないので、医師やセラピストと相談のうえで購入したものであっても自己責任となります。
リンパ浮腫は早期発見が大切
リンパ浮腫は難治性で、一度発症すると「治癒」が見込めないともいわれています。そのため、発症したらできるだけ早い段階で医師にかかるのが望ましいでしょう。日常の中で、自分の体の変化に気付けるようにすることも大切です。
セルフチェックをしよう
定期的にセルフチェックをすることで、体の変化を感じることができ早期発見につながります。
・皮膚のしわがなくなる、つまみにくい、硬い
・皮膚の上から指で軽く押すと、あとが残る
・袖口、下着、靴下のゴムや、指輪、腕時計、ブレスレットなどのあとが残る
・腕または脚の太さが5~10mm以上増える
毎日決まった時間に腕や脚の太さ(周径)を測って記録しておくと変化に気付きやすいです。
日常的に気を付けること
リンパ浮腫の発症を防ぐために日頃の生活にも十分に気を配ります。特に以下3つは必ず押さえて極力さけるようにしましょう。
皮膚を傷つけない、炎症を起こさない
細菌感染が原因でリンパ浮腫を発症してしまうケースもあります。ケガや虫刺されなどに注意。また、日焼けも一種の炎症です。
外出時には長袖の衣類を選んだりスキンケアをしたりすると良いでしょう。
四肢を部分的に締めつけない
局所に強い圧がかかってしまうことが原因でリンパ浮腫を誘発してしまうこともあります。正しいサイズの下着を身につけることや、時計や貴金属の使い方にも注意が必要です。
体重管理に気を付ける
太ってしまうと脂肪がリンパ管を圧迫してしまいます。標準体重を超えないようにしましょう。BMI25以下が好ましいです。[BMI値=体重(kg)/身長2(m)]
リンパ浮腫の症状が見られたらすぐに医師に相談を!
リンパ浮腫の治療に用いる弾性ストッキングや弾性スリーブは、症状によって圧迫力や着用スタイルが異なります。日々のセルフチェックで体の変化を少しでも感じたら、正しく治療を進めるためにも迷わず医師に相談しましょう。