リンパ浮腫の現出にはさまざまな原因が考えられますが、乳がんの手術後や治療後に発症するケースも少なくありません。
主な治療方法のひとつとして弾性ストッキングを用いることがありますが、正しく治療していくために、着用する際の注意点を押さえておく必要があります。
「リンパ浮腫」と「むくみ」の違いとは
リンパ浮腫について正しい知識を知っておくことは大切です。
みなさんがよく耳にする「むくみ」との違いや、リンパ浮腫がどのようなものなのかをご紹介します。
むくみについて
「むくみ」とは、血管外の皮下組織に過剰にたまった水分と老廃物のことです。むくみには大きく分けて「全身性」と「局所性」があります。
全身性は、体全体にむくみが現れる症状です。心臓や腎臓・肝臓といった臓器の病変が原因となる以外に、甲状腺機能障害や使用している薬剤の影響でも現出します。
局所性は、静脈やリンパ管などの脈管の機能不全に起因するものが多く、「リンパ浮腫」はこのリンパ管の機能不全による浮腫み(むくみ)のことです。
リンパ浮腫について
「リンパ浮腫」には「原発性(一次性)」と「続発性(二次性)」があります。
原発性(一次性)は、遺伝子異常など生来の理由でリンパ管が正常に機能しないことにより発生するケースが多いです。
続発性(二次性)は、外科手術といった後天的な理由でリンパ管に機能不全が生じたときに現出します。
日本では多くの続発性リンパ浮腫が「がん」の手術の後に現出していますが、手術後に必ず罹患(りかん)するものではありません。「どのような人が罹患するか」といったデータは現段階では特定されていません。また、「いつ発症するか」といった点も個人差があり、特定ができていないのが現状です。手術後すぐに発症する場合もあれば、5年後10年後になって発症する場合もあります。
リンパ浮腫の治療方法の一つは弾性ストッキングによる圧迫療法
リンパ浮腫の治療は大きく分けて「外科治療」と「保存治療」があります。
外科治療は、リンパ管と静脈をつなぐ手術をして、リンパ液の流れを作り出そうとする手術です。現在では技術の進歩もあり、顕微鏡を使用して非常に細いリンパ管と血管をつなぐことができるようになりました。
保存治療は「複合的治療」といわれ、スキンケア・用手的リンパドレナージ・圧迫療法・運動療法を症状に合わせて組み合わせて行い、できる限り良い状態を維持(保存)しようとする治療です。
この中の圧迫療法では、弾性ストッキングを使用するのか、弾性包帯を使用するのかを症状によって使い分けます。
弾性ストッキングを着用できないケース
下記のような疾患・症状をお持ちの方は、弾性ストッキングを使用することができません。これを「絶対禁忌」といいます。
- 重度の動脈血行障害
- 末梢(まっしょう)の閉そく性動脈疾患
- うっ血性心不全(心性浮腫)
- 感染症による急性炎症
- 有痛性青股腫
- 化膿(かのう)性静脈炎
「感染症による急性炎症」には水虫などの皮膚疾患も多く含まれています。
まずは、ご自身の主治医とよく相談することが大切です。
>>リンパ浮腫治療用弾性着衣をしようするときに気を付けなければいけないこと
医師と相談しながら着用するケース
下記のような場合は、医師とよく相談して、リンパ浮腫治療用弾性着衣を使用するかどうか、使用するのならどのように使用するかを決めます。これを「相対禁忌」といいます。
- 高血圧
- 狭心症
- 不整脈
- 強皮症
- 慢性関節リウマチ
- ズデック症候群
- 糖尿病
- 繊維過敏症
- 患部に知覚障害がある
- 乳幼児
主治医やリンパ浮腫治療の専門家とよく相談することが必要です。
>>リンパ浮腫治療用弾性着衣を使用するときに気を付けなければいけないこと
一人ひとりに合った正しい着用が大切
禁忌症(適応禁忌)は上述したものがすべてではありません。治療法の変化・進歩や、薬剤の進歩、弾性着衣の素材のイノベーションなど、さまざまな要因で変わっていきます。
リンパ浮腫の治療を目的とした弾性ストッキングは、患者の方一人ひとりの症状に合わせて正しい着用が求められます。必ず医師や専門家に相談のうえ、指示に従いましょう。