リンパ浮腫治療に用いる弾性ストッキングと弾性包帯。どのような違いがあるのかご存じない方も多いのではないでしょうか。
それぞれどのように使用するのか、またどのような特徴や違いがあるのかを見ていきます。
圧迫療法(弾性ストッキング・弾性包帯)は症状で使い分ける
ヨーロッパで行われているリンパ浮腫に対する複合的理学療法では、圧迫療法は集中排液期と維持期の2段階に分けられています。入院して、集中的に排液を促して浮腫を減退させる時期には弾性包帯を使い、退院後は細くなった状態を維持するために弾性ストッキングを使用するのが通例です。
日本では、入院での治療環境が整っていない現状のなかで、「複合的治療」と呼ばれる保存治療では、ステージ2bや3といった重症度の高い患者は弾性包帯をステージ1、2といった軽症例には弾性着衣を使用することが多くなっています。
いずれの方法も、①筋ポンプなどと協調し、静脈還流やリンパ流を促進させる②皮下間質組織圧を上昇させ、組織液やリンパ液の再貯留を防ぐという目的で実施されます。
弾性ストッキングの特徴
リンパ浮腫治療用の弾性ストッキングは、形状的には日常使用しているストッキングと変わらないため、普段の生活のなかでも使いやすいです。むくみの状況によって既製品かオーダーメイドかを選択できます。ただし、部位によってサイズが大きく違うような場合は既製品では対応できない場合もあります。
日常的に使用される一般的なストッキングと変わらない形状ですので、日常生活の中での動きが難しくなることはあまりありません。一方で、体の動きに合わせてストッキング自体が伸縮しますので、体が動いてもそれほど圧に変化が起きず、高い圧がかかることが無いという特徴もあります。
弾性包帯の特徴
多層包帯法と呼ばれる方法では、ショートストレッチ包帯(あまり伸びない包帯)を何重にも巻いて、しっかりとした圧をかけます。
足の場合は最低でも5~6本の包帯を使用します。1本5mの包帯が一般的で、片足に対して30mの包帯が巻かれることになり、結果として50mmHg程度の圧力をかけることになります。
この圧力は体を動かすと高くなります。というのも、弾性ストッキングと違って、ショートストレッチの包帯は伸びないので、体の動きに合わせて伸縮する幅が非常に小さいので、筋肉が膨張したときにも一定の「壁」を作っているため、圧が上がるという構造になります。このことが筋ポンプの動きを活性化し、静脈還流やリンパ流を促進させることになりますし、同時に皮下の圧力を上げることができ、リンパ液などの再貯留を防ぐことができるようになります。
弾性包帯は集中して排液できるため、短い期間でむくみを減退させるには適しています。
しかし、巻き上った腕または脚は包帯を巻いていないほうに比べると、包帯を巻いた分太くなってしまうため、靴やスカート・パンツなど服装の選択肢が少なくなることが考えられます。
現在では、ミドルストレッチやロングストレッチといった伸びる包帯を使用した方法も取り入れられるようになりました。また、ベルクロ式弾性着衣という、圧力は包帯並みで扱い勝手は弾性着衣に近いという新しいジャンルの治療具も出てきてます。
弾性包帯は圧を調節できる
弾性着衣の場合は製品に表示されている圧が最大圧になりますが、包帯の場合はむくみの状況によって巻き方を変えて圧を調節することが可能です。
患肢にかける圧は基準が決まっているため、いたずらに弱く巻くのは好ましくありません。どの程度の巻き方が正しく求められた巻き方か、医療者からしっかりと学ぶことが重要です。
緩んだら巻きなおしが必要
正しく巻いた包帯は強圧がかけられるため、使い始めの時期は巻いた状態で歩いたり、ひざの曲げ伸ばしやつま先立ちをしたりなどの動作をするだけで、むくみが改善されることがあります。むくみが改善されると当然包帯は緩くなるので、その都度、巻きなおしが必要です。
どちらも療養費支給の対象
弾性包帯も弾性着衣と同様「療養費」払いの対象です。
規程では、「弾性着衣を使用することができない」と医師が判断した場合に、弾性包帯も療養費の対象となるため、この判断がない場合は療養費の対象外になりますのでご注意ください。
弾性包帯を使用することが決まった場合は、自分でしっかりと巻き方を理解しなければなりません。実際に巻けるようになるまで医療者から教えてもらうことが必要です。