病期
リンパ浮腫の病期は、発症前の0期から重症例となるⅢ期に分かれます(表2)。
表2 | ステージ | 症状 |
0 | 潜在期【術前後】 | リンパ管の輸送に障害はあるが、まだむくみが見た目で確認できない時期。自覚症状は少ない。 |
Ⅰ | 発症初期【軽症例】 | むくみは手や足を心臓より高い位置に上げることで軽減する。圧痕(押した痕)ができる事がある。 |
Ⅱ | 【中等度例】 | むくみのある部位を安静にしたり、心臓より高い位置に上げていても、むくみの軽減はほとんどない。圧痕が明らかである。 |
Late in StageⅡ【中等度例】 | 組織の線維化により圧迫痕が残りにくい。 | |
Ⅲ | 【重症例】 | 象皮病を生じ、圧痕を認めない。肥厚、脂肪沈着などの皮膚に病変がでる。複合的治療 |
複合的治療
リンパ浮腫の治療は複合的治療といわれる「保存治療」と「外科治療」とがあります。
複合的治療とは、ドイツを中心に発達した「複合的理学療法」に日常生活指導を加え、病期によってその治療方法を選択する日本独自の保存治療です。
【複合的理学療法】
- スキンケア
- マニュアルリンパドレナージ
- 圧迫療法
- 圧迫下での運動療法
の4つを組み合わせて行う治療。入院を軸にした「積極的に浮腫を減退させる」時期と「減退させた四肢の状態を維持する」時期とに分かれます。
複合的治療の内容
●スキンケア
治療開始前に治療がすぐに始めることができるかどうか判断をするために、皮膚の状態を把握(スキンチェック)します。
また日常生活でも皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけることがポイントになります。
●医療リンパドレナージ
細胞のすきまに過剰に滞っている組織液やリンパ液を専門的なマッサージ技術により、健康なリンパ管へ誘導してむくみを改善させることができます。
●圧迫療法
医療リンパドレナージにより改善された皮膚のやわらかく良好な状態を維持し、さらに組織液・リンパ液の排液を促すために行います。
むくみの状態によって、弾性包帯を巻いて圧迫をする方法と、適切な弾性着衣(弾性スリーブ・弾性ストッキングなど)を着用する方法を上手に組み合わせて行います。
●排液効果を高める圧迫下での運動療法
弾性包帯・弾性着衣により患肢を圧迫した状態で、筋ポンプ作用を活かして効果的に組織液やリンパ液の流れを促す運動を行います。
(引用元:日本医療lリンパドレナージ協会)
病期によって実際に実施する治療の内容が異なることがわかると思います。適切な治療を受けることにより症状の改善が促され、精神的・肉体的苦痛が和らぎ、QOL(生活の質)の向上につながります。
外科治療
リンパ管と静脈を顕微鏡下の手術で吻合するLVA手術が最も一般的です。LVA手術については、東京大学医学部付属病院形成外科で、以下のように説明しています。
- 超微小血管外科(super microsurgery)の技術により、今までは不可能だった細い血管をつなげるようになり、体への負担が小さく優れた治療効果を有するLVAが可能となりました。
- 手術前のリンパ管造影の所見をもとに、局所麻酔をして皮膚を2cmほど切って手術を行います。0.5mmほどのリンパ管と細静脈をみつけて、それらを切ってつなぐことでバイパスを作ります。LVAの吻合数が多いほど効果が高い傾向があることから、複数の術者が同時にさまざまな場所で手術を行い(足首と太ももなどを同時に)、約4時間の手術時間内にできる限り多くの吻合を行う病院もあります。
- 局所麻酔のため手術中にも意識がはっきりしており、基本的には手術の映像をみてもらい、術者が手術の状況を説明しながら手術を行います。
- ●入院は約1-2週間で、手術前後は医師の指導通りの弾性ストッキングによる圧迫療法が必要となります。
禁忌症
多くの疾患と同様、リンパ浮腫にも禁忌症があります。(表3)
表3 | リンパドレナージ | 圧迫療法 |
絶対禁忌 |
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相対禁忌 |
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表にある疾患がある場合は、その疾患の主治医とよく相談してリンパ浮腫の治療を考えていくことになります。
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