訪問看護ステーションを訪問させていただくようになって、在宅の現場には多数の「浮腫み」に悩む患者の方がいらっしゃることを実感しました。また、看護師の方々も情報の少なさに困っていることも実感しました。
そこで、今回からシリーズで「リンパ浮腫」の概要について記事を載せていきたいと思います。医療者の書くものではありませんので、用語としておかしいところもあるかもしれませんが、できる限り正確に情報提供していきたいと思います。
からだのしくみ
私たちの体の「循環」の仕組みは、図1のように、心臓から動脈を通って「酸素」「栄養素」が組織細胞に運ばれていき、そこで使用された老廃物が静脈とリンパ管によって回収されていきます。このとき、静脈は水分を中心にした老廃物を回収し、リンパ管はたんぱく質のような分子量の大きな老廃物を回収します。《図1》
リンパ管で回収された老廃物は、いくつものリンパ節を通過しながらろ過・分解され、鎖骨下にある静脈角で静脈と吻合して心臓に戻ります。
回収される老廃物の90%は静脈によって、10%がリンパ管によって回収されるといわれています。
むくみの分類
「浮腫み」にはその原因によって様々な種類があります。表1はそれを簡単に識別できるようにしたものです。
※表は江戸川病院心臓血管外科統括部長・榊原直樹医師による分類
術後の「リンパ浮腫」は「局所性」で「指でへこまない」むくみに分類されます。
「リンパ浮腫」の定義
リンパ浮腫は一般的には下記のように定義されています。
●リンパ管の圧迫や狭窄(きょうさく)のためにリンパ管の流れが悪くなると、リンパ管の内容物がリンパ管の外にしみ出し、むくみが現れます。これを「リンパ浮腫」と言います。
●とくに重要なのが蛋白質で、蛋白質がリンパ管からもれて組織内に蓄積されると、組織細胞の変性と線維化が起こり、その部分の皮膚が次第に硬くなっていきます。
つまり、図1で示された循環の仕組みの中で、オレンジ色のラインのどこかに支障が出ると起こるのが「リンパ浮腫」とされます。
一方で、近年下記のように解釈する医療者も出てきています。
●リンパ管と静脈はお互いに依存しながら体液の戻り循環を構成している。
●リンパ浮腫はリンパ系の不全と静脈吸収の不全が重なって起こる脈管系の障害である。
●副交枝や新生管、普段代謝で使われていないリンパ管を活性化することと静脈代謝の改善が必要である。
この解釈で言うと、図1のオレンジ色のラインと紺色のラインの両方をケアするべきだという考え方になります。
「リンパ浮腫」の症状
リンパ浮腫の代表的な症状は下記の通りになります。
●組織間液、リンパ液がうっ滞する⇒むくみ・だるさ・重さ・疲労感
●細菌類の処理能力が低下する⇒炎症を起こしやすくなる・蜂窩織炎など
●たんぱく質の処理能力が低下する⇒線維化・角化・皮膚肥厚など
●その他⇒色調変化・脂肪増生・多毛など
「リンパ浮腫」の発症時期
いつから浮腫むかという発症の時期については、特定できないのが現状です。術後すぐにむくみ始める患者の方もいれば、10年15年経ってから発症する方もいます。術後2~4年後が最も多いと推定されています。
化学療法を開始したときや、放射線治療後にむくみ始める例も見られます。
「リンパ浮腫」の発症部位
どこから浮腫むかについても、はっきりとした統計データは存在しません。
下記の部位からむくみ始めることが多いといわれています。
【上肢】術側上肢内側、手術創下部の乳房、術側腋窩から肩甲骨にかけて
【下肢】大腿内側上部、外陰部周辺、下腹部
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